夏の旅 

8.16.2022  日々のこと

雷鳥の山

日本三大霊山と呼ばれる、富山県の立山に登りに行った。
青春18切符で各駅停車に乗ってのんびり旅をした。



各駅ノート


この切符は何度乗り降りしても良いから、立ち寄りたい場所を事前に調べる。ちょっと面倒くさいのを乗り越えると興味が出てくる。旅する前のこの時間が楽しいんだよね、となる。どんな景色に出会えるだろうと心ときめかす。

おやつ


朝のおやつは岐阜で。大垣駅から降りてすぐの、金蝶園に寄った。朝からすでに行列ができている。名物の水まんじゅうを3種類、こし、抹茶、レモンソーダ味をたのんで、それ以外にも若あゆ、信玄餅、ほおずきの練り切りと冷たい抹茶を頼んだ。美味しい。



滋賀県に入って海だ!と思ったら琵琶湖だった。あるある?
醒ヶ井(さめがい)駅で降りて、徒歩5分地蔵川へ向かう。梅花藻と絶滅危惧のお魚ハリヨちゃんを見るためだ。湧水とせせらぎと人の暮らしが溶けあった古くて美しい石造りの街並みがあった。ああここはぜひ絵にしたい、と思った。湧きいずる神社で折り返して歩く。汗がすぐふきだした。川べりに座って冷たいせせらぎで足を冷やして涼を楽しんでいたら、あやうく目当ての電車を逃しそうになって、小走りで駅に戻った。

焼き鯖そーめん


長浜駅で降りるとすっかり昼ごはんの気分。お目当ては焼きさばソーメンだ。よかろうの行列に数十分ほど並ぶ。店内は古くて建て付けが独特で面白かった。思わぬ階段や踊り場にとてもワクワクした。二階席に腰を落ちつけて注文してすぐやってきました焼きさばソーメン。色づくそうめんの上にどっかり鯖のかたまりが乗っかっている。これが美味しいんだ。鯖の臭みがなくて味が濃すぎず絶妙。初めて食べる感じだった。農家へ嫁いだ娘に届けたという優しい郷土料理。美味しくて疲れがとれた。
3時のおやつは福井駅で降りて羽二重もち!柔らかくって、みょーんとどこまでも伸びるのびる。こうでなくちゃ。美味しかった。

おやつ2


夜に富山県に到着。翌日電車で立山駅へ向かった。木造りの駅って味があってたまらないよね。広々とした田んぼの向こうに山がつらなる。夏のもくもく雲が美しい。景色を楽しむうちに、よく揺れる電車はせいいっぱい山を登りだした。ほどなく杉や白樺やブナの森に囲まれ立山に到着。 砂防博物館をじっくり堪能。とても面白かった。

ハナバチ


室堂まではバスで向かった。標高約2450m。森林限界がきて、丈の低い高山植物の世界が広がる。700種類以上あるらしいからもう何がなにかはわからないけれど、珍しい生き物たちが美しく不思議な風景を生み出してくれていた。酸素が薄く、あくびのような深い息を何度もするんだけど、脳みそに行き渡ってない感じがする。身体が慣れてない。

壮大な景色


天気が悪くて雲の中を歩く。途中から雨が降ってきたのでいそいで雨合羽を着た。雪道を歩くときは用心深く一歩一歩すすんだ。雨風が強くなってきたので、1時間ほどで折り返すことにした。
帰りの室堂でのこと。めずらしい光景に出会う。つんつく餌をついばむ雷鳥12匹の雛と母鳥が食事しながら大行進していたのだ。雷鳥はふつう5、6個の卵しか生まない。何らかの理由で親鳥を失ったひなをひき取って大所帯になっているのではないかとガイドさんがおっしゃった。「こんな光景は初めて見ます。感動しますね」と目をすこし潤ませていた。

雷鳥観察記念


動画を撮ったはずなのに、私のスマホには地面と雨合羽しか映っていなかった。なんてセンスないのだろう。でも感動とともに目に焼き付いているからいいか。

雷鳥のスケッチ


帰りはJR高山線に乗った。ガタンゴトン、川と一緒に山の中を行く。釣りする人や鳥。ペンキ塗りたてのような赤い橋。ザ・旅って感じ。なんて夏休みらしいんだろう。キツネが畑を駆け抜けた。
電車好きの人たちが乗っていて停車するたび写真を撮りに行く。わかる気がするなぁ、これは高揚するよなぁ。

途中、下呂温泉で降りて川沿いの足湯につかりながらぽへーっと過ごした。次の電車まで2時間あったけれど色々行く元気がない。そのまま足湯で疲れを溶かした。美しい夕暮れの空をながめた。淡い赤むらさきから青むらさきのグラデーション、ピンクとオレンジに光る夏の入道雲。旅の日記はこの景色で終わるのがいいだろう。







© Fukui Rie